芸能人が被告となった初の裁判員裁判の成り行きが注目を集めています。産経ニュースの「法廷ライブ」では裁判の様子が克明に記述され、毎日1~2時間の遅れでサイトにアップされていました。法廷での様子が手に取るようにわかるので、まるで裁判を傍聴しているようです。
昨年から施行が始まったばかりの裁判員制度に、まだ違和感を感じる方もいらっしゃるかも知れません。マスコミの報道に惑わされることなく、裁判で提出された証拠と証人尋問、論告、そして弁論のみを根拠として、客観的に判断されることが要求されます。
この裁判、もしあなたが裁判員ならどんな判決を下しますか? 法廷ライブを最初から最後まで熟読し、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
民間人の常識的判断を裁判に反映するという趣旨のこの制度は、アメリカでは「陪審員制度」として古くから採用されています。多くの「法廷モノ」映画では、陪審員に訴えかける最終弁論が、映画のクライマックスとして重要な役割を担います。
多くの裁判シーンでは弁護士や検察官が主役ですが、この作品では陪審員に焦点を当て、そこに巧妙なサスペンスの要素を織り込んだユニークな展開となっています。
邦題があまりにひどいので、タイトルには原題のみを記載しました。

陪審員が、当事者双方による質疑応答で選出されるアメリカでは、だれを陪審員に選ぶかで判決が大きく左右されます。原告側と被告側は、自分サイドに有利になるよう候補者の経歴や思想を調べあげて対応しますが、その専門家が「陪審コンサルタント」です。
ハイテクを駆使した悪徳コンサルタントを演じるジーン・ハックマンが、圧倒的な存在感を見せつけます。
ダスティン・ホフマンは原告側の著名弁護士を演じますが、苦悩や愛情は上手く表現できているものの、迫力に欠ける点が少し物足りない印象でした。
映画2012で不死身の(^^;)パパ役を演じたジョン・キューザックが、人間心理の操作に長けた謎の陪審員として、独特の持ち味を発揮しています。交渉を担当するガールフレンド「マーリー」との忘れ去られた過去が、次第に明らかになっていきます。
原作はジョン・グリシャムの「陪審評決」で、訴訟の相手はタバコ会社でした。ところが映画「インサイダー」がタバコ会社への訴訟を一足先に取り上げたため、この作品では銃器メーカーに変更されています。
(ちなみに、映画「インサイダー」も超オススメ! アル・パチーノが(相変わらず)カッコいいです^^)
陪審員の中でどのように議論が行われるか・・・ 外から遮断された世界であるだけに、脚色もあるでしょうが、非常に興味深く描かれています。
とてもよく似た状況を描いた作品として、1957年の映画「十二人の怒れる男」が挙げられます。万人に高い評価を得ている秀作ですので、まだの方は是非ご覧になってください。
さて、アメリカでの陪審員制度ですが、あくまで民意を司法に取り入れる制度のひとつに過ぎません。世界で採用されている類似の制度は、大きく3つに分かれます(ウィキペディアより引用):
陪審制 (Jury system):
民間から無作為で選ばれた陪審員が、刑事訴訟や民事訴訟の審理に参加し、裁判官の加わらない評議によって事実認定と法の適用を行う。参審制:
陪審員だけが事実認定を行う陪審制と異なり、職業裁判官と民間人(参審員)がともに審理・評議を行う。主にヨーロッパの大陸諸国で採用されている。参審員は、事件ごとに選ばれる陪審員と異なり、任期制である。裁判員制度:
日本で2009年5月21日から施行された裁判員制度は、原則として一般市民から選ばれた裁判員6名と職業裁判官3名による合議体により、一定の重大な刑事事件の審理を行い、事実認定及び量刑を判断するものであり、参審制に近い制度である。ただし、裁判員が事件ごとに選ばれる点では参審制と異なる。
日本では、幕末から明治初年、および昭和3年から18年まで、陪審制が採用された経緯があったようです。2009年に「裁判員制度」として復活しましたが、裁判官と共同で量刑まで判断するという点で、より「参審制」に近いと言えます。
それぞれの特徴をまとめると、こんな感じです。(クリックで拡大)

このあたりがキーポイントでしょうか:
- 陪審員制度: 陪審員に一任し、有罪・無罪のみを決定。12人の陪審員の全員一致が必要。
- 裁判員制度: 6人の裁判員と3人の裁判官の共同評議で、量刑も判断。多数決で決める。
有罪無罪を陪審員に一任するというアメリカの制度、ドラマチックですよね~
「Not guilty!」という言葉が響き渡る法廷の興奮などは、映画のクライマックスを彩るに相応しいシーンのひとつと言えるでしょう。(^_-)-☆










